
僕のプロフィールの口絵にしているこの絵も「真夜中の図書館」に使われた絵です。
僕の絵は最初このようにペン画で、モノクロでした。
これはフリーハンドだけど、当時の僕は設計屋として、剃刀のような鋭い線を書くのが目標でした。
切れ味のいい極薄の刃物のような線。
空中を切り裂くような、それでいてデリケートで、温度が上がったら溶けてしまいそうな氷の刃の線。
それは僕の、僕自身がなりたい人物像でした。
時を経て今、僕はフリーハンドの優しい印象の線をひいています。
それは僕の人生を歩む上でのコツなのか、本当に優しくなれたのかは
自分でもよく判らないのです。
この頃の線はまだ幼さと優しさが見受けられます。
そしてこの後、作品は残っていませんが、きつい定規の線になります。
僕はそのどちらの時代も好きです。
時を経て、強いエネルギーの自分と、やわらかいエネルギーの自分と
両方を経験してもまだ僕は自分の線にたどりつきません。
いや、たどりつかないんじゃない
その時その時の自分を精いっぱい表現すればいいんだ。
冷たい線も優しい線も
どちらも僕なんだから。